特定口座を新NISAへ移し替えたら得なのか。計算したら10年で4万円でした

新NISA・制度

特定口座の投資信託を、新NISAに移し替える。やることは、「売って、買い直す」だけです。

でも毎年、ここでつまずきます。いくら売ればいいのかが、すぐに出てこないからです。

しかも今回、ちゃんと計算してみました。

税金を40万円払って、10年後に得しているのは、約4万円でした。

思っていたより、ずっと小さい数字です。それでも自分は、毎年これをやっています。理由は6章に書きました。

つみたていぬ

売る金額を計算するとこが、いちばんめんどくさいねん。

この記事の目次

  1. 移し替えとは「売って買い直す」だけ
  2. いちばん難しいのは「いくら売るか」
  3. でも、きっちりは売れません
  4. 税金を払ってでも移す価値はあるのか、計算しました
  5. 含み益が大きいほど、メリットは小さくなります
  6. それでも自分が移している理由
  7. 移し替えのタイミングは12月後半
  8. やらなくていい人
  9. まとめ

1. 移し替えとは「売って買い直す」だけ

まず仕組みです。

特定口座の資産を、そのままNISAに移す方法はありません。できることはひとつだけです。

  1. 特定口座で売却する
  2. 新NISAで買い直す

これだけです。単純ですが、売却したときに含み益に対して税金がかかります。税率は20.315%です。

なお「移管」という言葉で探している人も多いですが、特定口座からNISAへ移管する制度はありません。移管は証券会社をまたいで口座を移すときの手続きで、別の話です。売って買い直すしかないというのが、この記事の前提になります。

つまり移し替えとは、税金を先に払って、その先の利益を非課税にするという取引です。


2. いちばん難しいのは「いくら売るか」

ここが毎年つまずくところです。

欲しいのは、税引後の金額です。売却額ではありません。

自分が売っているのは、2008年から持っているSMT グローバル株式インデックス・オープンです。含み益は790%を超えています。 評価額が取得費の約8.9倍まで膨らんでいる状態です。

この状態で180万円ぶん売ると、どうなるか。

  • 取得費:180万円 ÷ 8.9 = 約20万円
  • 利益:180万 − 20万 = 約160万円
  • 税金:160万 × 20.315% = 約32万円
  • 手元に残るのは、約148万円

180万円ぶん売っても、新NISAには148万円しか入りません。 成長投資枠は32万円ぶん埋まらずに終わります。

税引後から逆算します

では、税引後で180万円を作るには、いくら売ればいいのか。

実際に自分が売ったときの数字です。

項目金額
売却額222.0万円
取得費24.9万円
利益197.1万円
税金(20.315%)40.0万円
手取り182.0万円

※含み益790%で概算しています。実際は基準価額や約定価格により多少前後します。

図にすると、こうです。

222万円売ると、税金40万円が引かれて182万円が残る


180万円を入れるために、222万円ぶん売っています。 差額の40万円が税金です。売った額の18%が消えます。

計算式にすると、こうなります。

売る金額 = 欲しい金額 ÷(1 − 0.20315 × 利益の割合)
利益の割合 = 含み益 ÷ 評価額

自分の場合、利益の割合は197.1万 ÷ 222万で約0.89です。当てはめると、こうなります。

222万円 = 182万円 ÷(1 − 0.20315 × 0.89)

利益の割合は、証券会社の画面に出ている評価損益と評価額を割り算するだけです。難しい数字は要りません。


3. でも、きっちりは売れません

式を書いておいて言うのもなんですが、このとおりには売れません。

投資信託は、注文を出してから約定するまでに時間がかかります。その間に基準価額が動きます。 だから、売却額も税金も、注文した時点では確定しません。

だから自分は、感覚で少し多めに売っています。

余った分は、特定口座でオルカンを買います

実際の手順はこうです。

  1. 「だいたいこれくらいやろ」で多めに売る
  2. 税引後が182万円くらいになる
  3. そのうち180万円を成長投資枠で買う
  4. 余った2万円は、特定口座でオルカンを買う

税引後182万円のうち、180万円を成長投資枠へ、2万円は特定口座でオルカンを買う


端数は特定口座に戻すだけです。現金で置いておく理由がないので、そのままオルカンを買っています。

ぴったり売る必要はありません。多めに売って、余りは特定口座に戻せばいいです。

足りないほうが困ります。成長投資枠は、その年に使わなかった分は消えてしまうからです。多めに売っておくほうが安全です。


4. 税金を払ってでも移す価値はあるのか、計算しました

ここが本題です。

40万円も税金を払って、本当に得なのか。

比べるのは、この2つです。

  • 移す:222万円を売って、税引後182万円を新NISAへ
  • 移さない:222万円をそのまま特定口座に置いておく

先に、いちばん大事なところを書きます。

特定口座でも、売るまでは税金はかかりません。つまり222万円が、そのまま複利で増え続けます。だから思ったほど差は開きません。

ここを見落とすと、移し替えを過大評価します。

年率6.5%で運用して、最後に全部売って現金にしたとき、手元に残る金額です。

移す(NISA)移さない(特定口座)
10年後341.6万円337.2万円+4.4万円
20年後641.3万円628.5万円+12.8万円
30年後1,203.8万円1,175.4万円+28.5万円

10年で4.4万円です。

40万円の税金を先払いして、10年後に取り返せるのが4.4万円。正直、思っていたのと違いました。

「税金を払ってでも移すべき」と言い切れるほどの差ではありません。


5. 含み益が大きいほど、メリットは小さくなります

なぜこんなに小さいのか。理由は含み益が大きすぎるからです。

同じ222万円を売っても、含み益率によって結果はまったく変わります。

含み益税金手取り10年後の差
50%15.0万円207.0万円+26.4万円
100%22.5万円199.5万円+19.8万円
300%33.8万円188.2万円+9.9万円
500%37.6万円184.4万円+6.6万円
790%(自分)40.0万円182.0万円+4.4万円

きれいに反比例しています。含み益が小さいほど、移し替えは得です。

理由は単純で、先に払う税金が軽いぶん、NISAに入る元本が大きくなるからです。含み益790%だと、売った時点で18%も目減りしてしまいます。

移し替えは、含み益が小さいうちにやるほど得です。

自分は18年放置してから動いたので、いちばん不利な条件でやっていることになります。やるなら早いほうがいいというのは、この表を作って初めて実感しました。


6. それでも自分が移している理由

ここまで書くと「じゃあやめれば」という話になりますが、自分は毎年やっています。理由は3つあります。

理由1:信託報酬も、同時に下げているから

これがいちばん大きいです。

4章の計算には、ひとつ隠れた前提がありました。「同じ商品を持ち続けた場合」です。

でも実際の自分は、SMTを売って、オルカンを買っています。この2本は信託報酬がまったく違います。

ファンド信託報酬
SMT グローバル株式インデックス・オープン0.55%
eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)0.05775%

約10倍の差です。この差を織り込んで計算し直すと、こうなります。

移す(オルカン)移さない(SMT)
10年後339.8万円320.4万円+19.4万円
20年後634.4万円567.2万円+67.2万円
30年後1,184.4万円1,007.0万円+177.4万円

10年で4.4万円だったものが、19.4万円になりました。30年なら177万円です。

つまり自分の場合、移し替えの価値の大半は、非課税ではなく信託報酬から来ています。

これは自分でも意外でした。信託報酬の話は信託報酬をなめたらあかんに書きましたが、こういう形でも効いてきます。

なお、SMTとオルカンは相関0.970でほぼ同じ値動きをします。中身が同じで、コストだけ10倍違うという状態でした。その検証は3本持っているつもりが、実は2本でしたにあります。

理由2:どのみち、いつか売るから

「移さなければ課税されない」というのは、永遠に売らない場合の話です。

自分はFIREを見据えています。取り崩す時期が来れば、特定口座の資産は必ず売ります。そのとき税金は払うことになります。

先送りできる期間が短いなら、先に払って、そのあとを非課税にするほうが素直です。

理由3:枠を埋める資金が、他にないから

そもそもの話です。

年360万円を新しい入金だけで用意できるなら、特定口座を売る必要はありません。でも自分には無理でした。新しく入れているお金は年180万円だけで、残りは売却で作っています。

その話は年360万円は用意できません。新NISAの半分は、売却で埋めていますに書きました。


7. 移し替えのタイミングは12月後半

年初にNISAの買付を済ませたいなら、売却は12月後半がおすすめです。

新NISAの成長投資枠は、証券会社によって12月後半から翌年分の買付ができるようになります。楽天証券もそうです。売却と買付をほぼ同じタイミングで動かせるので、資金が市場から離れる期間を最小限にできます。

年末ギリギリにバタバタするより、12月中旬から後半に余裕を持って動くほうが安心です。

その数日に暴騰がきたら、ごめん。私はそこは割り切ってやってます。


8. やらなくていい人

全員がやるべき作業ではありません。

毎年360万円を新規入金で埋められる人は、売る必要がありません。わざわざ税金を払う理由がないです。

近いうちに使う予定のお金も動かさないほうがいいです。移し替えた直後に暴落すると、非課税枠を使ったうえで含み損を抱えることになります。しかもNISAの損は、他の利益と相殺できません。

含み損の資産しかない人は、売っても税金はかかりません。ただし損益通算や繰越控除の話がからむので、そこは確定申告の範囲になります。この記事の対象外です。

逆に、含み益が小さめの資産があって、新NISAの枠が余っている人は、いちばん条件がいいです。5章の表のとおり、含み益が小さいほど得になります。


9. まとめ

  • 移し替えは「特定口座で売って、NISAで買い直す」だけ
  • 欲しいのは税引後の金額。 180万円入れるのに222万円ぶん売りました
  • 基準価額が動くのできっちりは売れない。 多めに売って、余りは特定口座でオルカンを買う
  • 税金だけで見ると、移す得は10年で4.4万円しかありませんでした
  • 含み益が大きいほど不利。 やるなら早いほうがいいです
  • 自分の場合、価値の大半は信託報酬を0.55%から0.058%に下げたことから来ています

「税金を払ってでもNISAへ」とよく言われます。自分もそう思って動いていました。

でも計算してみたら、非課税そのものの効きは、思っていたより小さかったです。効いていたのは、ついでにやっていたコストの入れ替えのほうでした。

移し替えの主役は、非課税より信託報酬かもしれません。

この記事を書くまでは、自分も「NISAへ移せばかなり得する」と思っていました。

でも計算してみると、非課税だけの差は10年で4万円。 本当に効いていたのは、SMTからオルカンへ乗り換えて、信託報酬を10分の1にできたことでした。

思い込みではなく、一度数字で計算してみる。

20年投資してきて、それが一番大事だと改めて思いました。


投資は自己責任でお願いします。この記事は特定の金融商品・税務アドバイスを提供するものではありません。税率は2026年8月時点のもの(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)で、計算は税制や運用利回りの前提を置いた試算です。詳細は税理士等の専門家にご相談ください。

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