2,000万超の確定拠出年金、どう受け取る?一時金と年金で、税金は何十万も変わる

前回は、退職した確定拠出年金をiDeCoへ「どう移すか」を書きました。今日はその続き、「どう受け取るか」——出口の話です。

※ 先に言葉の整理を。企業型確定拠出年金(企業型DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)は、中身は同じ「確定拠出年金」です。退職までは企業型DC、移したあとはiDeCo、と名前が変わるだけ。この記事ではまとめて「確定拠出年金」と呼び、区別が要るときだけ「企業型DC」「iDeCo」と書き分けます。

受け取り方ひとつで、税金は数十万〜百万円変わります。一時金か年金か、そこに退職所得控除・公的年金等控除・公的年金まで絡んで、めちゃくちゃ複雑。

なので先に言っておくと、この記事に、きれいな”正解”はありません。 変数が多すぎて、今から最適解を1つに決めるのは無理。だから「打ち手の引き出し」と「自分はこう考えてる」という方向性まで。それでも、型を知っておくだけで、受け取りミスで何十万も損する事故は防げます。今日はそのための頭の整理メモ。

(※iDeCo周りは制度変更が多いので、受け取るときは必ず最新を確認してください)


この記事の目次

  1. 前提:今の私と、これからの方針
  2. 受け取り方は3つ、効く控除は2種
  3. 一時金なら「退職所得控除」が効く
  4. 受け取り方の構想:控除を”時間で散らす”
  5. おまけ:確定拠出年金は「守られる財産」
  6. 受け取る前に、自分が死んだら?
  7. おまけ:自分用Q&A
  8. まとめ:答えは出なかった。でも分かったこともある

まず、前提:今の私と、これからの方針

今の確定拠出年金(企業型DC)は、2,000万を超えました(実額は前回で晒したとおり)。15年ほったらかして、外国株インデックス1本で、ここまで育ってくれた。

ちなみに、マッチング拠出(月1.4万)は、今年やめる予定です。理由はいくつかあるんですが、長くなるので別の機会に。

そして将来。私はたぶん60歳までは働きません。退職したら確定拠出年金をiDeCoへ移し、オルカンで運用継続。このままいけば、かなり低く見積もっても、60歳で3,500万くらいにはなるはずです。

これからの段取りを、ざっと時系列で並べると、こうなります。

時期やること
今年マッチング拠出をやめる
〜退職まで確定拠出年金はオルカンで運用継続(会社拠出が退職所得控除の年数を稼ぐ)
退職時iDeCoへ移換(段取りは前回記事
退職〜60歳少額でも拠出を続け、退職所得控除の年数をマックスに(28年狙い)
60歳〜受け取り開始(一時金+年金を組み合わせ)← この記事の本題

——というわけで、この記事の本題は、いちばん下の行。60歳からの3,500万を、どう受け取るかです。

受け取り方は3つ、効く控除は2種

確定拠出年金の受け取り方は、大きく3つです。

  • 一時金(まとめて受け取る)… 退職所得控除が使える
  • 年金(分割で受け取る)… 公的年金等控除が使える
  • 併用(一部を一時金、残りを年金)

ポイントは、受け取り方によって、使える”控除”が変わること。一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除。この2つの控除をどう使うかが、出口の節税の肝になります。

そもそも、いつから受け取れる?

受け取りは、原則60歳から(加入年数が10年以上ある場合。足りないと、最大65歳まで後ろにずれます)。私はもう加入15年なので、60歳からでOK。

ひとつ安心なのは、受け取るとき、別のどこかに移し替える必要はないこと。運営管理機関(楽天など)に請求すれば、自分の口座から直接お金が出てきます。「年金形式」というのも、別の年金制度に移すんじゃなく、口座から分割で払ってくれる受け取り方のひとつ、という意味です。

一時金なら「退職所得控除」が効く

受け取り方の1つ目、一時金。ここで効くのが、前回も触れた退職所得控除です。

一時金の税金は、こう計算されます。

退職所得 =(一時金 − 退職所得控除)×1/2

退職所得控除でドンと引いて、さらに残りを**×1/2**してから課税。だから一時金は、相当優遇されてます。

その退職所得控除は、確定拠出年金の加入年数(掛金を出した年数)で決まります。

加入年数退職所得控除額
20年40万 × 20 = 800万円
25年800万 + 70万×5 = 1,150万円
28年(私が60歳まで続けた場合)800万 + 70万×8 = 1,360万円
30年800万 + 70万×10 = 1,500万円

20年を超えると、1年あたりの控除が40万→70万に増える。長く続けるほど効いてきます。

だから私は、28年=控除1,360万を狙う

私は加入が今15年。60歳まで掛金を出し続ければ、加入28年。退職所得控除は1,360万まで伸びます。この1,360万ぶんは、受け取るとき、まるごと無税で引ける

※ ①で「マッチングはやめる」と書いたのと矛盾しない?——在職中は会社の拠出が、この年数を稼いでくれるんです。だから自分のマッチングをやめても、年数は止まらない。退職して移したあとだけ、自分で少額でも拠出して年数を伸ばす。フェーズで役割が違うわけです。

じゃあ、一時金は1,360万ぴったりが正解?

——と思いきや、そう単純じゃないんです。

「控除ぴったりで止めて、残りは全部年金」が一見ベストに見えます。でも退職所得の**×1/2**が強力なので、控除を超えて一時金で取ったほうが、トータルで安くなる場合がある

じゃあ、自分の想定3,500万だと、実際いくらずつ受け取るのが得なのか。残りの年金、そして65歳からの公的年金とセットで、次のセクションで試算します。

受け取り方の構想:控除を”時間で散らす”

受け取り方の2つ目が、年金。年金で受け取ると、公的年金等控除が使えます。

ただし注意。この控除は、老齢基礎年金・厚生年金(公的年金)と”同じ枠”を共有してます。だから、確定拠出年金の年金と公的年金を同じ年に受け取ると、控除を食い合って税金が増える

そこで考えたのが、受け取りを”時間で散らす”構想です。

年齢受け取り控除の状況
60歳確定拠出年金を一時金退職所得控除(1,360万)
60〜64歳確定拠出年金を年金公的年金等控除を独占(公的年金はまだ無い)
65歳〜公的年金 約150万/年控除110万が、公的年金でほぼ埋まる

私の公的年金は、ざっくり年150万の見込み(平均年収450〜470万・ねんきん定期便ベース)。65歳からこれを受け取ると、公的年金等控除(65歳以上110万)は、ほぼこれで埋まります

→ だから、確定拠出年金の年金は、公的年金が始まる64歳までに受け取り切る。控除の食い合いを避けるわけです。

で、自分の3,500万だと、税金はいくら?(試算)

一時金と年金をどう配分するか。自分の想定3,500万で、ざっくり試算しました。

一時金年金(分散)税金の合計(目安)
1,360万2,140万約220万
2,000万1,500万約170万 ←いちばん安いゾーン
2,500万1,000万約198万
3,500万(全部一時金)0約310万

意外なことに、「一時金は控除ぴったり1,360万が最適」とは限らない。退職所得の×1/2が効くので、一時金を2,000万くらいまで増やすほうが、合計は安くなります(約170万)。でも全部一時金にすると累進が上がって逆に高い。

——というわけで、今回は”ざっくり構想”

これでもびっくりするほど計算しました。でも、退職金(私はDCに一本化)、公的年金が実際いくらか、何年で分散するか、そのときの制度。変数が多すぎて、まとまりませんでした。「だいたいこの方向」だけ持っておいて、詳細はそのとき考える。

ただ、確実に分かったこともあります。

  • 受け取り方ひとつで、税金は何十万円も変わる(適当に受け取ったら、普通に損する)
  • 自分の場合は、一時金と年金を駆使して、なんとか64〜65歳までに受け取り切る——これが効いてくる

細かい最適解は出せなくても、この2つの”型”さえ押さえておけば、大きな事故は避けられる。今日はそれで十分です。

※税額はすべて目安(社会保険料や制度改正で前後します)。

おまけ:確定拠出年金は「守られる財産」

確定拠出年金には、税金や受け取り方の話とは別に、地味だけど大事な”安心”があります。

確定拠出年金の受給権は、法律で”差押禁止財産”に指定されていて、保護がかなり強固です(確定拠出年金法)。

  • 自己破産しても、原則として残る
  • 一般の借金の取り立て・差し押さえの対象にならない

つまり「老後のための、誰にも崩せないお金」として、特別に守られている。

ちなみに、NISAは守られません

意外かもしれませんが——NISAは守られないんです。自己破産すると、NISA口座の資産は破産財団に組み込まれ、原則として処分・換価されて、債権者への配当に回ります

かなりレアなケースかもしれませんが、知っておいて損はない話です。

受け取る前に、自分が死んだら?

確定拠出年金を自分用に調べてるうちに、ふと疑問がわきました。

「自分が死んだら、これ、どうなるんやろう?」

調べてみたら、けっこう怖いことが分かった。死亡したあと、5年ほっとくと、確定拠出年金は実質”無くなってしまう”可能性があるんです(正確には法務局に供託されて、まともに受け取れなくなります)。

銀行口座なら、通帳やキャッシュカードがあるから、家族も”存在に気づける”。でも確定拠出年金は、受け取りがかなり先(60歳〜)で、ふだん触らない。自分ですら財産だと意識してないくらいだから、家族が気づくのは、もっと難しい

で、ハッと気づきました。——そういえば、嫁に企業型確定拠出年金(企業型DC)のこと、言ってないわ。

これ、まずいんじゃないか。知らずにいたら、今の2,000万が、まるごと吹っ飛ぶかもしれない。

たぶん、今死んだとしたら、会社の企業型DCから何かしらのアクションはあると思う。思うけど……投資に興味のない人からすると、「企業型DC??」ですよ。うちの嫁も、まさにそう。NISAは知ってても、確定拠出年金となると、たぶん分かってない。

メインの証券口座・NISA・銀行口座は、嫁に伝えてあります。普段から自分で管理してる資産の99%は、そこ。でも、企業型DCだけは”枠外”だった。 あぶねえ、言ってないことに今ごろ気づいた。そして、請求権は5年。

しかも今は、企業型DCの書類も電子化されていて、紙も届かない。残された家族が”存在に気づくすべ”が、ほとんどないんです。これは、退職してiDeCo(個人型)に移したあとも同じこと。証券口座にNISAや特定があるからって、家族がiDeCoの手続きまで一気にやれるかは、正直あやしい。

——というわけで、配偶者や家族には、確定拠出年金をやってること、ちゃんと話しておく必要があるなと。「どこの金融機関で、いくらあって、自分が死んだら5年以内に請求が要る」。それだけは共有しておく必要はある。 さっそく、嫁に話しておこうと思います。

意外と、“投資の枠外”になりがちな確定拠出年金。 どうか、お気をつけください。

おまけ:自分用Q&A

調べる過程で気になったことを、メモがてら残しておきます。

Q. 退職して6か月、手続きを忘れたら? A. 自動移換されて、現金で塩漬けにされます(運用ストップ+年数のカウントも止まる)。あとからiDeCoへ移し直せますが、塩漬けだった期間の運用益は戻りません。詳しくは前回記事に。

Q. iDeCoに移したあと、また企業型DCに戻せる? A. 戻せます。再就職して企業型DCのある会社に入れば、そっちへ移換できる(転職先の規約による)。持ち運びは双方向です。

Q. 受け取るとき、売るタイミングは選べる? A. 選べません。相場を見て…ではなく、事務手続きのスケジュールで自動的に現金化されます。

Q. 掛金は出さず「運用だけ」じゃダメ? A. ダメじゃないですが、退職所得控除の年数が止まります。月数千円でも出し続けたほうが、出口の控除が伸びてお得。

Q. 受け取りは、何歳から? A. 原則60歳から(加入10年以上)。急がなければ、75歳まで遅らせて運用を続けることもできます。

まとめ:答えは出なかった。でも分かったこともある

この記事を書く中で、きれいな結論は出ませんでした

退職金(私はDCに一本化)、公的年金がいくらか、何年で受け取るか、そのときの制度。変数が多すぎて、最適解を1つに固めるのは、今は無理。

でも、調べたおかげで、確実に分かったこともあります。

  • 受け取り方ひとつで、税金は何十万円も変わる(適当に受け取ると、普通に損する)
  • 自分の場合は、一時金(退職所得控除)+年金(公的年金等控除)を、64〜65歳までに受け取り切る

細かい最適解は出せなくても、これさえ知っておけば、致命的なミスは避けられる。出口は、受け取るそのときに、最新の制度で組めばいい。

——そして、もう1つ。調べていて、「あれ、これ以上むやみに増やさないほうがいいかも」と思う場面が、何度かありました。確定拠出年金は、大きくしすぎると、出口で必ず課税の壁にぶつかる。「実は、積みすぎると損かもしれない」——この話は、奥が深いので、次の記事でじっくりまとめます。

出口は、いつだって悩ましい。NISAにせよ確定拠出年金にせよ、“どう受け取って、どう使うか”は、増やすより難しい。(新NISA出口戦略も、その悩みの記録です)

投資は自己責任でお願いします。この記事は特定の金融商品を推奨するものではありません。

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